
ドラッカー教授は、著書『マネジメント』で次のように記しています。
「企業とは何かを決めるのは顧客である。なぜなら顧客だけが、
財やサービスに対する支払いの意志を持ち、経済資源を富に、
モノを財貨に変えるからである。しかも顧客が価値を認め購入
するものは、財やサービスそのものではない。財やサービスが
提供するもの、すなわち効用である。」
ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は、これを間違えました。
SCEは当初、家庭用ゲーム機PS3内臓HDD20GB版を税込62,790円で
発売する予定でした。SCEの言い分としては、PS3は単なる家庭用ゲーム機
ではなく、エンタテインメント機能をふんだんに盛り込んだ家庭用スーパー
コンピュータだ、ということでした。発売時点で税込49,980円に値下げした
にもかかわらず、PS3は競合製品のWii(任天堂)に敗れました。
SCEは、家庭用ゲーム機のユーザーは家庭用スーパーコンピュータなど
欲しがってはいないということに、気付くことができませんでした。
どれほど高性能な機能を付加しても、ゲーム機はゲーム機です。
わざわざハードウェアの価格を吊り上げるような機能は、まったく必要
ではなかったのです。
ゲーム機に7万円も出すようなユーザーは、ほとんどいないでしょう。
これは「こんなにすごい技術を搭載したハードなのだから、このくらいの金額
は出してください。」という、顧客がゲーム機に対してどのような価値、効用を
求めているのかを無視した技術の押し売りです。当然、売れませんでした。
「ものづくり」という言葉に拘りすぎたために、市場のニーズを見失ってしまった
のでしょうか。中小の製造業の社長さんなどでも、「俺たちの技術は世界に通用
するものなのに、製品が全然売れない。国は何とかしてくれ。」なんて仰る方が
いますが、これもSCEと同じです。どんなにすごい技術が使われた高品質な製品
も、ニーズがなければ売れるはずがありません。
さて、国土交通大臣が羽田空港をハブ化するという主旨の発言をしたことに
対して、千葉県の知事や成田市の市長が苦言を呈しているようです。
たしかに、成田国際空港の開港には、長い闘争の歴史があります。命を落とさ
れた方もいます。千葉県や成田市の方々は、あの闘いは何だったのか、という
思いもあるでしょう。
しかし、海外からやって来る渡航客にとっては、そんなことは何の関係もあり
ません。利用者にとって大事なのは利便性であって、開港前後の闘争の歴史
など、特に海外の方にとっては、知ったことではないのです。
実際に、成田国際空港は便利が悪い。海外からの帰国の際、成田到着が夜
となる場合があります。このときがひどい。私は、東京に行くために高速バスを
利用したのですが、待ち時間をコーヒーでも飲んで過ごしたかったのに、売店や
喫茶店は軒並み閉店してました。だから食事もできません。まわりは真っ暗。
時間を潰す場所がないのです。おまけに東京までが、あまりにも遠過ぎます。
最も重視すべきである利用者のニーズを考えれば、羽田のハブ化は妥当だと
思うのです。快適だと思ってもらわなければ、利用者は減ってしまうのですから。