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思い出の彼女
作者:ピースライト
虫の声が響く公園を、牧村康夫(まきむらやすお)は静かに歩いていた。夜風が心地良く、月明かりがきれいだった。
しかし、それを楽しみに公園を歩いていたわけではない。ただ、通りを迂回するよりも、公園を横切った方が早いというだけのことである。
いつも彼は、何気なくそこを歩いていた。
広い公園だった。中央には噴水があり、そこから四方に歩道が延びている。昼間であれば、テニスコートもあるし木陰もあるし、ベンチもあるしトイレもある。なかなか趣深い公園なのかもしれない。しかし、夜半となるとそのほとんどが障害物としての役割しか果たしていなかった。
康夫も初めは不気味に思っていたが、もはや慣れてしまっていた。こんなところで、何も起きるはずがないと思っていたのだ。
いつものように、噴水のところを左へ折れる。そこの一角が、公園の中で最も暗い空間の一つだった。外灯は等間隔に並んでいたが、その後ろはちょっとした雑木林のようになっていて、一歩足を踏み込めば、人の姿も闇に紛れてしまう。考えようによっては、危険なスペースだった。
普段から静かに歩く癖のあった康夫は、この一角に差しかかると殊更静かに歩いた。特に何があるというわけではないが、自然と身体がそう動くのである。
「ううぅっ……」
不意に、男の呻き声が聞こえてきた。康夫は驚いて辺りを見回す。しかし、意識した途端に虫の声ばかりが聞こえてくる。
(空耳だったのかな……)
そう思いながら再び歩を進める。
「ううっ、うあぁ……」
今度はさらにはっきりと聞こえた。茂みの奥からだ。
康夫の心臓が早鐘を打つ。行くか行くまいか、迷いながらも好奇心は警戒心に勝り、彼は茂みの方を覗き込んだ。
(もしかしたら、病気か何かで苦しんでいるのかも……)
心の中で言い訳をしながら、茂みを少しずつ分け入っていく。
あまりよく見えなかったが、確かにそこには、蠢く影があった。しかし、まだよく見えない。
「うう……ぐっ、うは……!」
康夫はそっと、注意して静かに一歩、影の方へと近寄ってみる。そこには、二人の人間がいた。月明かりに照らされて、意外と鮮明に見える。
一人は、太い木にもたれかかる、中年の男だった。くたびれたスーツに禿げた頭で、典型的な日本のサラリーマンという感じだ。
もう一人は、うずくまって男の股間に顔を押しつけていた。短いスカートから白い足が見えている。
男女が、茂みの中でオーラルセックスをしていたのだ。
康夫はそれを見て、身体が硬直してしまった。行為自体に驚いたわけではない。男のペニスを口に含んでいるのが、女子高生だったからである。
(実際に、こんなことってあるんだな……)
息を潜めて様子を窺っていた康夫は、そんなことを考えていた。しかし、どこか違和感がある。
(いや、そんなはずはない……!)
康夫は、違和感の正体に気がついた。その制服を着た少女は、四年前、康夫自身が高校生だった頃、好きだった同級生の亜佐美(あさみ)にそっくりだったのである。
しかし、彼女であるはずはない。亜佐美は大学受験を機に、遠く離れた街へ行ってしまったからだ。
「うぐぐ、あっ! い、イク!」
中年の男が、かなり小声でそう言ったのが聞こえた。
康夫は目を見張った。
中年の男は小刻みに痙攣し、女子高生の口内に精を放っている

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